巨大市場になるか?中国コーヒー消費

img_af0195d38b18ce9e75502b88af31e4f295487_thum800.jpg

Source: Yahoo Japan

加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント) 中国で最も一般的な飲み物は伝統的な中国茶であり、コーヒーの消費量はわずかです。しかし、最近ではコーヒーの存在感が大きくなり始めています。しかも、単なる“飲み物”としてだけではなく、コーヒーを楽しむ“空間”や“生活スタイル”があわせて提供されるようになっています。そんな、中国におけるコーヒーに関する最新の動向を2回に分けてお伝えします。
■ コーヒー市場はまだ小さいが 一時期まで日本で“飲み物”と言えばお茶でしたが、1970年代にコーヒーの消費量(重量換算)が緑茶を上回り、最近ではコーヒーが最も一般的な飲み物となっています。2019年の調査では、一人当たり週に10杯以上(年間で500杯以上)、コーヒーを飲んでいます*1 。 *1 全日本コーヒー協会「コーヒーの需要動向に関する基本調査」(http://coffee.ajca.or.jp/data、http://coffee.ajca.or.jp/wp-content/uploads/2019/06/data04_2019-06b.pdf)。レギュラー/インスタント/缶コーヒーなどの種類別や、家庭/職場/喫茶店などの飲用場所別のデータもある。 一方中国では、一般的な飲み物と言えば伝統的な中国茶であることは今も変わりません。伝統茶は、会社の接待や家庭の団らんといったいわば中国文化に根差しているためです。 さらに近年は、ミルクティー(奶茶)が若者を中心に広く飲まれるようになってきました。「奶茶店」と呼ばれる店舗ではミルクティー以外にも果物やタピオカなどを入れたさまざまな種類のお茶が提供されています。消費形態は出前や飲み歩きが主流で、専用の機器が必要なため自宅での消費はほとんどありません。 このようななか、中国におけるコーヒーの位置付けはどのようになっているでしょうか。前瞻産業研究院の調査(https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/200416-73a257df.html)によると、2019年の一人当たりのコーヒー年間消費量は約7.2杯でした。2013年には3.2杯であったのでかなり増えてはいるのですが、日本をはじめとする世界各国と比べると、まだかなり少ないレベルにとどまっています。

 実は、中国のコーヒーの歴史は日本と同じぐらい古く、中国の消費者にコーヒーが初めて紹介されたのは18世紀後半です。上海に中国初の喫茶店ができたときとも言われていて、日本に喫茶店ができたのとほぼ同時期です。  また、中国でもコーヒー豆の生産を行っています。中国南西部の雲南省はコーヒーに適した気候であり、当時ベトナムでコーヒーを生産していたフランスからの技術導入をきっかけに、19世紀にコーヒー生産を始めています。生産量は2016年で16万トン。2018年の世界の生産量は約1000万トンなので、市場シェアは1%強というところです。  現状での中国のコーヒー市場はまだ小さく、しかもインスタントコーヒーが大きな比率を占めています。 ■ 上海は喫茶店数が世界最多の都市  しかし、今中国の大都市を中心に、コーヒーが静かに広がりつつあります。  上海交通大学とアメリカ南カリフォルニア大学の研究所が連名で発表した「2020国際文化大都市評価報告」によると、2021年1月上海市内における喫茶店の数が世界のどの都市よりも多いという事実が明らかになりました。同報告の調査対象はロサンゼルス、ニューヨーク、ベルリン、ロンドン、上海、東京、シンガポール、ソウルなど世界の各都市で、文化水準を測る数値の一つとして喫茶店の数を調べています。  上海には約8000店の咖啡館(中国で喫茶店やカフェに相当する店舗)があるとされています。現地のレストラン評価サイトである美団にも6000店舗以上の咖啡館が登録されています。さらに上海市内のスターバックスは700店舗以上と世界一の数です。  上海では、2021年3月にコーヒー文化の大規模展覧会「上海咖啡文化周(シャンハイコーヒーカルチャーウィーク)」(第1回)が開催されました。上海は公式発表によると一人当たり年間20杯以上のコーヒーを飲む、愛飲家の集中する都市だといわれています。

 このイベントで注目されるのはコーヒーそのものというより、コーヒーを楽しむ場作りやコーヒー関連書籍などが大きく取り上げられたことです。さらに従来は主にインスタントコーヒー用として使われていた雲南省のコーヒーが、高級品として大々的に紹介されました。このイベントでは高級な文化の担い手としてコーヒーを扱う傾向が見られました。  上海咖啡文化周のような大規模イベントだけではなく、少人数のコーヒー会や国産コーヒーブランドのPRイベントが徐々に盛り上がりを見せています。  北京では約5000店舗、広州市では約4000店舗と、大都市の咖啡館の数も増えています(马蜂窝旅遊の中国コーヒー文化報告書より)。スターバックスなどのチェーンだけではなく、個人経営や小規模資本の店舗も数多くあります。  筆者が住んでいる広州でも同様のイベントが5月初めの連休(労働節)に開催されました。同様のイベントは深圳市でも開催されており、中国の主要都市でコーヒーが文化コンテンツとしてなりつつあるといえるでしょう。

■ スターバックスは大規模工業団地を建設中  コーヒー市場の成長を狙った大企業の投資活動も活発です。スターバックスは中国ですでに4800店舗を持っており、現在最も注力しているのが中国市場であるといえます。また同社は江蘇省昆山市に、1億3000万ドルをかけて大規模なコーヒー工業団地の建設を進めています(China Times、https://www.chinatimes.com/newspapers/20200402000249-260203? chdtv)。  中国発のコーヒーブランドとしては2017年創業の瑞幸咖啡(luckin coffee)があり、急速に店舗数を拡大していますが、米国進出はブレーキがかかっていたりします(「中国ラッキンコーヒー、米で破産申請」https://www.jiji.com/jc/article? k=2021020501317)。  2020年5月には、中国テクノロジー企業の代表格であるテンセント(腾讯)がカナダのドーナツチェーン「Tim Hortons」(Tims)に1億元(約17億円)を超える投資を行いました。テンセントは自社のデジタルエコノミー生態系の一つとして、新しいコーヒーブランドの確立を目指しています。2019年に中国に進出したTim Hortonsは、現在中国に約150店舗があります。これを、2021年末までに400店舗、2030年までに1500店舗まで拡大する計画です。  いずれ中国の一人当たりの消費量が日本などのレベルになるとしても、まだ時間はかかりそうです。ただし、中国はそもそも人口が多い(日本や米国に比べて1桁多い)ので、消費の総量としては、世界のコーヒー消費量に大きな影響を与えるようになるかもしれません。  後編では、異業種からコーヒー店に参入した企業の狙い、コーヒーやミルクティーの浸透に対する伝統的な茶館の対応をインタビューを交えてお届けします。

 
Previous
Previous

El buen café está en riesgo: ¡el cambio climático tiene la culpa!

Next
Next

If You're Putting This in Your Coffee, Stop Immediately, FDA Says